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コメントログ3 はじめまして、にゅうと申します。深み填りを一章から外伝まで読ませていただきました。蒼貴が章が進む毎に成長していき、第一章の自信無さげな雰囲気が無くなっていくあたり、読んでいて上手いと思いました。武装神姫を知ったのがもうバトルロンドが終了決定した後だったので現在はバトルマスターズをプレイしていますが脳内で妄想が溢れ返っておりこんな風に文章に出来る方たちがうらやましいですね。外伝終了してから今度は新章になるのか分かりませんがどんな形であれ楽しみにしています。 -- にゅう (2011-07-30 22 25 12) にゅうさん> こちらこそ初めまして。この『深み填りと這上姫』を書いている夜虹です。感想をありがとうございます。 この物語は蒼貴と紫貴の成長物語なのでそういった感想が聞けて何よりです。蒼貴はオーナーを得て、技や装備、相棒と友達を少しずつ得ていく事でそれを表現してみました。 ここには書いてみようと頑張っている人もいるので、にゅうさんも妄想があるのでしたらまずは実践してみるといいと思いますよ。何事も回数を重ねてこそですしね。 外伝が終わって、その中でやってみた事が何とか形になってきたので、次章ではそれを実践してみようと思います。期待に応えられるよう頑張ります。 -- 夜虹 (2011-08-01 13 11 55) 夜虹さんがこんな面白いものを書いていたなんて知りませんでした、これからも読ませていただきますね^^ -- 竹 (2011-08-19 00 55 24) 竹さん> 読んで頂きありがとうございます。 非常に長い文章になっているとは思いますが、読んでいただければ幸いです。 僕も感想を励みに今後の神姫小説を頑張っていこうと思います。 -- 夜虹 (2011-08-20 00 25 42) 初めまして、クロムという者です。 最初から外伝まで読ませて頂きましたが、読んで行く内に物語に、そして登場するキャラ達に引き込まれとても面白くて読む手が止まりませんでした! いきなり出てきてアレですが、これからも楽しみにしておりますので無理せずに頑張ってください。 そして、恐縮ですがもし宜しければこちらの作品の設定を、自分の作品にも使いたいと思っているのですが宜しいでしょうか? 長々と長文、失礼いたしました。 -- クロム (2011-09-04 01 36 01) >クロムさん こちらこそ初めまして。作者の夜虹です。 最初から外伝まで読んで頂き、ありがとうございます。一人一人、 楽しく読んでいただけて光栄です。期待に応えられる執筆していきたいと思います。 作品の設定に関しては上の方に書いてある通り、コラボ可能となっており、 設定もキャラも使用可能ですのでどうぞお使いくださいませ。 クロムさんの作品を楽しみにしております。 -- 夜虹 (2011-09-05 05 36 53) 桐皮町にいらして下さったようで、ありがとうございます。真那ちゃんも尊くんも、機会があればお酒飲みに来て下さい(笑)! -- ばるかん (2011-09-12 22 21 27) 新章読ませていただきました。技術面でも精神面でも蒼貴、紫貴共に確実に成長していますね。これから話がどう進んでいくのか楽しみにしています。 -- にゅう (2011-09-14 12 56 18) ばるかんさん> こちらこそ、武装食堂を設定をお借りしています。ありがとうございます 武装食堂のキャラの性格を上手く引き出せるように頑張ります。 食堂は五話で出していましたねw ビールのほかにも何かありそうな予感がしますw 特に真那は色々とのむでしょうね……w にゅうさん> 読んで頂きありがとうございます。 武装が無い分、それらが磨かれていく事になりますね。 第一章の「知恵と勇気で何とかする」という考えは変わらない訳です。 それ以上に尊の精神面の強さが彼女達をここまで引っ張るのが大きいですね。 今後もその成長を上手く描き、期待に応えられるよう、頑張っていこうと思います -- 夜虹 (2011-09-16 20 14 23) 久しぶりに紙媒体で読みたく成る程面白いです。 紫貴と蒼貴が二人共可愛過ぎる!! これからも頑張ってくださいm(_ _)m -- 焦げかぼちゃ (2012-04-04 23 57 57) >焦げかぼちゃさん こんにちは。作者の夜虹です。紙媒体で読みたいとまで言っていただけて光栄の限りです。 社会人になって更新のペースがだいぶ落ちてしまいますが、今後も蒼貴と紫貴の活躍を見ていただければと思います。 次の尊と真那の決着もまた、お楽しみにしていただければ幸いです。 -- 夜虹 (2012-04-08 11 14 01) 最新話、待ってました! 前話のバトルの決着もとてもよかったのですが、尊と真那のその後がとても気になっていたので、すぐに読ませていただきました(^^) 落ち着くところに落ち着いたようで、よかったですねぇ、尊くん(笑) 私も社会人なので、執筆時間の捻出には苦労しています。今後の展開も楽しみにしておりますので、お互いに頑張りましょう! -- トミすけ (2012-04-24 22 45 06) >トミすけさん 待っていていただけて何よりです。 ミコちゃんはついにやりましたね。たぶんこれからも真那に振り回される日が続くことでしょうw 公開告白をしてしまったのでもう逃げられませんしねw お互い、社会人で苦労しますな。僕もトミすけさんの今後の小説の展開を楽しみにしております。 今後もまた、頑張りましょう。より良い物語を書ける様に -- 夜虹 (2012-04-28 15 18 25) 最初は尊くんはヲタ嫌いならなんで神姫やるんだ…と思いましたが、読み続けるに連れて好感度がぐんぐん上がってましたw 凄く面白いです!応援してます! -- 名無しさん (2012-05-18 10 37 15) 久々に来たら最新話出とるし 久々に爆発して欲しくないカップル出来とるWW -- 焦げかぼちゃ (2012-05-21 21 08 54) 名無しさん> ありがとうございます。応援にこたえられるように頑張っていこうと思います。 偶然が重なって深みに填る事となる人ですからね。そこから色々と広がるのがミコちゃんです(ぉぃ 今後もまた、お楽しみにしていただければと思います。 焦げかぼちゃさん> お久しぶりです。爆発して欲しくないカップルと言っていただけるのは光栄の限りです。 この二人はこの先、どういう付き合い方をするのか……w -- 夜虹 (2012-05-23 03 03 32) 戻る
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第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 第2話 「風兎」 大阪城外堀、水上ステージ 大阪城の外堀の一部をそのまま武装神姫の水上ステージとして、利用したステージで障害物として杭や半壊したボートなどが置かれている。 エーベル「さて、はじめようか・・・ルールはシンプル。俺と戦え」 エーベルは黒い翼をピンと伸ばし、右手にはアルヴォPDW9を装備し、左手は腰に手を当てている。 赤い瞳がじっとアオイを見据える。 アオイ「気が済むまで戦うってことか、まあ分かりやすくていいな、そういうの好きだぜ」 尻尾のエンジンをブウウウンと唸らせる。心なしか悦んでいるかのように軽いリズムを刻む。 立花「アオイ、武装は何を持っていく?」 アオイ「三七式一号二粍機関砲が1門と千鳥雲切、1本」 立花「二粍機関砲!?あれは対重MMS用の機関砲だろ?」 立花は首をひねる。二粍機関砲は強力な機関砲だが、大きく重く取り回しが悪く機動性が高い神姫に命中させることは至難の業だ。flak171.5mm機関砲のほうがアーンヴァルのような機動性の高い神姫に命中させるには相性がいい。 アオイ「そんなこたァいちいち言われんでもわかってるわ!!ここは俺に任せろや!!」 アオイが立花に苛立ち怒鳴る。 立花「へえへえ、釈迦に説法でごぜいましたねェ!!すみやせんでした!!」 立花は苦々しい顔をしてアオイに武装を渡す。 アオイ「ごちゃごちゃうるさいわ!ヴォケ」 エーベル「おーい、まだかー早くしろよ」 アオイ「せかすな、慌てる乞食はもらいが少ないっていうだろ?」 アオイはゆっくり丁寧に武装を確認しながら装着する。 エーベル(こいつ・・・焦らずにしっかりと安全確認しながら武装をつけてる。相当慣れてるな・・・・) エーベルはアオイに一挙一動を注意深く観察する。 戦いは戦う前からすでに始まっている。相手の数少ない言動や行動、クセを読み取り、相手が何を考えてどういう行動を行うのか、事前に予測しながら戦術を考える。 エーベルはカマを賭けた。アオイをわざと挑発することで怒らせて雑に武装をつけるのかと予想していたが、挑発には乗らなかった。 つまり、こいつは武装の大切さ、口は自分と同じく悪いがリアリストだ、落ち着いている。そして気が付いている。 私がカマを賭けたことを・・・・ エーベル「・・・・・・・」 アオイ「悪いな、待たせたな!!考えはまとまったか?」 エーベル「いいや、気にしちゃいない、ある程度な」 油断できない、即効で決めよう、一気にスラスターを吹かして一撃離脱。攻撃がはずれたら急上昇して上を取って太陽を背にして再び一撃離脱。アスカ型は格闘性能に優れる、ドックファイトに持ち込まないほうがよいな、幸い、相手は重い機関砲を背負ってる。こっちの速度にはついてこれないだろう・・・・・・ エーベルの考えがまとまった。 アオイ「さあて、はじめようか」 エーベル「ああ」 ドルンドルンとリアパーツのスラスターを吹かせる。アイドリング、機関が主目的に貢献せず、しかし稼働に即応できる様態を維持しようとする動作。即応できるようにエンジンを温めるエーベル。 ヒュイイイイイインンインインイン、スラスターが風を斬り唸る。 アオイはニタリと笑う。 こいつなにが可笑しいんだ? バトルロンドの画面にテロップが流れる。 □黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス VS □戦闘機型MMS 「アオイ」 Aクラス 「ゲットレディ・・・・・」 バトルロンドの筐体のランプが点滅し無機質なマシンヴォイスが叫ぶ 「go! 」 ポオンとランプが光る。 エーベルは獣のように咆哮を上げ、呼応するようにスラスターが真っ赤に燃え上がり爆発的な加速力を生み出し、エーベルは一直線にアオイに向かって突撃する。 エーベル「いやあああああああああおッツ!!!」 両手でしっかりとアルヴォPDW9機関銃を保持し固定すると、アオイに向けて放った。 黄色の曳光弾の光跡がばらっと流れる。 アオイはくんと身体をひねるように大回りで攻撃を回避する。 エーベルはぐんとアオイとそのまますれ違い、そのまま加速を生かして急上昇を行う。 エーベル「よし、このまま太陽を背にして上位を取る!!空戦の基本だ」 一度上を取ってしまえばこちらのもの、相手は重い機関砲をぶら下げている。それに相手は大回りで大げさに回避した。機動性と速度で圧倒してしまえば・・・・ エーベルの目が見開かれる。 エーベル「な・・・」 追い越し、急上昇するエーベルの真横からさっとアオイが踊りだしスラッと左手で千鳥雲切を抜刀し、エーベルに向かって切りかかってきたのである。右手には重い機関砲がさっぱりなくなっている。 そこでエーベルは初めて気が付いた。 エーベル「コイツ!!はじめから二粍機関砲を捨てて身軽になるつもりでッ!?」 アオイ「でやああッ!!!」 すれちがいざまにアオイはエーベルのアルヴォPDW9機関銃を一太刀で真っ二つに切り捨てた。金属音が響き、 バラバラになった機関銃がぼちゃぼちゃと水面に落ちる。 エーベル「っち!!」 エーベルはすかさず、左肩に搭載していたM4ライトセイバーをすばやく抜き取り、アオイの斬撃に対応する。 開始から数秒もたたずにすさまじい攻防が繰り広げられる。 野次馬の神姫やオーナーたちはポカーンと口をあけている。 コウモリ型「おおおーー」 砲台型「すんげえー」 オーナー1「思い切りがいいな、あのアスカ型」 オーナー2「こんな空戦、滅多にお目にかかれないぞ」 ワシ型「エーベル!!押されるな!」 立花はカバンからペットボトルのお茶を取り出しくびっと一口飲むと、て2人の戦いを観戦する。 立花「ふむ、そういうことか、アオイ・・・はなっから機関砲なんて使うつもりはなく、ブラフだったのか、無茶しやがる」 ちょうど、そのとき公衆便所から一人の若い女性が満足そうな顔で手をハンケチで吹きながら出てきた。 斉藤「ふんふふーんふーん♪三日ぶりー三日ぶりぶりーーんと・・・あれ?なんか盛り上がってるわね」 ひょことバトルロンドのステージを覗くと、なにやら見知った顔の神姫・・・というか自分の神姫が戦っている。 斉藤「あれ?エーベル?誰かとバトルしてるのかな?」 エーベルは斉藤の姿をチラッと見つけて、一瞬動きが止まる。 エーベル「マスター!?いまごろノコノコと・・・」 アオイ「余所見してる場合かァ!?甘いぜッ!!!!!!!おらァッ!!」 エーベル「ッツ!!しまっ・・・」 ミス、非常に単純なミスだったが、アオイはそれを見逃さなかった。 そして次の週間、アオイは思いっきり頑丈な着陸脚で、エーベルの柔らかいお腹に突きこむように蹴りを放った。 ズム・・・鈍い音を立ててエーベルの腹に鋭い蹴りがめり込んだ。 エーベル「がはっ・・・」 エーベルの口から雫が飛び散る、アオイは千鳥雲切の柄で続けざまにガツンとエーベルの顔面を殴った。 アオイ「うおおおおおおおおお!!」 バキンとエーベルのバイザーが粉々に砕け散り、エーベルはショックで失神し、そのまま水面にたたきつけられるかのように墜落した。 どぼんっ・・・・ 墜落し戦闘不能となったので、バトルロンドの画面にテロップが流れる。 □黒天使型MMS「エーベル」 Sクラス 撃破 アオイはひゅんと千鳥を振るい、カキンと着陸脚を鳴らす。 アオイ「足癖が悪くてな、スマンな」 斉藤「!?えーエーベル!?な、なにがあったの!?あれ?負けたァ?」 斉藤はイマイチ事態が飲み込めず、持っていたハンケチをぼとりと地面に落としてしまった。 To be continued・・・・・・・・ ・第3話 「牙兎」 トップページに戻る
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雨が降り注ぐ近代都市を、重武装の神姫が滑るように移動していた。 その神姫は背中のブースターを全開にし、その巨躯からは想像もつかないほどの速度でビルの谷間を翔ける。 その姿は・・・神姫と言うよりは・・・・一体の機動兵器の様だった。 「・・・・・・・・目標確認、破壊、する」 機動兵器の彼女は小声でそう呟く。元々声の大きい方ではないからだ。 『うん。なかなか調子がいいじゃないか。ブレードよりもこう言う兵器系に向いてしまったのはなんとも皮肉なもんだが・・・・まぁいいか。それよりもノワール』 「なに」 『今日一日の感想はどうだい?』 「・・・・・それを・・・どうして・・・・聞くの?」 ノワールはそういいながらビルの陰から現れたターゲットを破壊する。 右手のライフルの残弾は・・・・残り僅か。 『どうしても何も、ハウはもう寝てるしサラに聞くわけにもいくまい。私達が見たのは暗闇で何か話していた二人だけだ』 「・・・・・・・・・・・」 彼女の主の言葉を無視しマグチェンジ。 その間も左手に装備したライフルは火を吹き続けている。 『おぉっと。わからないという返答はなしだよ? 具体的な意見を聞くまでは、このトライアルは終わらないし終わってもその武装は使わせてあげませんからね?』 多分、クレイドルで寝ている自分の傍にはニヤニヤ笑った主がいるのだろう。ノワールはそう思った。 意地が悪い。 「・・・・多分・・・二人・・・好き合った・・・・でも・・・・」 ・・・・でも、なんだろう? 何か違うような、そうでないような。そんな感じがする。 『・・・・ふむ。つまり微妙な状態なわけだな』 とうとう右手のライフルの残弾がなくなった。 ノワールはライフルを捨てると、左手のライフルを右手に持ち返る。 そのまま空いた左腕で、近くまで来ていたターゲットを殴った。ターゲットはよろめき、その隙にライフルで止めを刺す。 それと同時にアラームが鳴り響き、ノルマをクリアした事を知らせた。 『ん? 随分と早いな。もう二百体倒したのか。・・・・・AC武装は物凄い相性がいいな。メインこれで行こうか』 「ヤー、マイスター」 * クラブハンド・フォートブラッグ * 第十九話 『出現、白衣のお姉さま』 「ちょっと! 何で起こしてくれなかったのよ!! 遅刻確定じゃない!!」 「そうは言われましても。何度も起こしたのですが・・・・まさかハバネロが効かないくらいに眠りが深いとは」 「どおりで口の中がひりひりするわけね! 毎度の事ながらあんたには手加減って言葉が無いの!?」 「――――――わたしは相手に対し手加減はしない。それが相手に対する礼儀と言うものなのです」 「無駄に格好いい!? あんたいつからそんなハードボイルドになったの!?」 「時の流れは速い・・・というわけでハルナ。わたしと話すより急いだ方がいいのでは?」 「あんたに正論言われるとムカつくのはなぜかしらね・・・・?」 朝、目が覚めたときにはもう八時を過ぎていた。 普段私を起こすのはサラの役目だけどさ。流石にこういうときは起こしに来てよお母さん・・・・・・。 大急ぎで制服に袖を通し、スカートのファスナーを上げる。 筆箱は・・・あぁもう!! 「何か学校行くのがだるくなってきた・・・・休もうかしら」 私がそういうと、サラが驚いた顔で見つめてきた。 え、なに? 「・・・・珍しいですね。普段なら遅刻してでも行ってたのに。と言うか無遅刻無欠席じゃないですか。行ったほうがいいのでは?」 「ん・・・でも何か面倒になっちゃってね。・・・別にいいじゃない。たまには無断欠席も。それに・・・・・」 学校には、八谷がいる。 昨日の今日でどんな顔をしたらいいのか判らない。 お互いにはっきり言葉にしなかったとはいえ・・・・OKしちゃったわけだし。 「うん、決めた。今日はサボる。サボって神姫センター行って遊びましょう!」 「・・・・・まぁ、別にいいですけれども」 そうして辿り着いた神姫センターには、当たり前と言うかなんと言うかあんまり人がいなかった。 まぁ月曜日だし午前中だし。来ているのは自営業さんか私みたいなサボり位だろうけど。 それでも高校生と思しき集団がバトルしてたのは驚いた。まぁ多分同類だと思うけど。 ・・・・でも強いな。あのアイゼンとか言うストラーフ。 砂漠なら・・・勝てる、かも? 「それにしてもなんだか新鮮ですね。人が少ない神姫センターというのも」 「平日はこんなものじゃない? 仕事や学校あるし。・・・・あぁでも最近は神姫預かる仕事も出来たんだっけ」 「そんな職業があるのですか。なんと言うか、実にスキマ産業的な・・・・所でハルナ、わたしは武装コーナーを見たいです」 私はサラの言葉に苦笑しながらも、センターに設けられた一角に向かって歩き出す。 このセンターは武装やら神姫本体やら色々揃ってたりするので結構お気に入りだ。筐体もリアルバトル用とVRバトル用の二種類を完備してるし。 とりあえず売り場についた私はサラを机に乗せ、商品を自由に見せて回る。・・・・買うつもりは無いのよ。 そうこうしているとサラが一挺の拳銃のカタログを持ってきた。 「ハルナ、このハンドガンなんてどうでしょうか」 「・・・いや、そういうの良く判らないんだけど」 「なんと!! ハルナはこの芸術品を知らないと!? このマウザーは世界初にして世界最古のオートマティックハンドガンなのです。マガジンをグリップ内部ではなく機関部の前方に配置しているのが特徴でグリップはその特徴的な形から『箒の柄』の異名で呼ばれています。かつては禿鷹と呼ばれた賞金稼ぎ、リリィ・サルバターナや白い天使と呼ばれたアンリが使用した銃として有名ですね。さらにこの銃、グリップパネル以外にネジを一本も使用しないというパズルのような計算しつくされた構造を持っておりこの無骨な中に存在するたおやかな美しさが今もマニアの心を魅了し続けて ―――――――――――」 「あ、この服可愛いー。でもレディアントはサラに合わないかな」 「ひ、人の話を聞いていないッ!? そして何故ハルナではなくこのわたしがこんなに悔しいのですかっ!?」 ふふん。ささやかな復讐なのよ。 「でもさ、だったらそんなへんてこな銃じゃなくてこっちの馬鹿でかい方が強いんじゃないの?」 「ぬ・・・わたしのツッコミを無視して話の流を戻すとは。いつの間にそんな高等技術を・・・・それはともかく、確かに威力が多きければ強いと言えなくもないですね。でもそのM500は対人・対神姫用としては明らかにオーバーパワーです。リボルバーですから装弾数も期待できませんし」 「ふぅん。数ばらまけないのはきついわね」 威力だけじゃ勝てないってことか。 サラのマニアックな説明はそもそも理解する気が無いけれど、戦闘に関してはさすが武装神姫。私よりも知識が多い。 ・・・うん、この後バトルでもしてみようかしら。 どうせ暇だし、作戦を立てたり実力を図る意味でもバトルはしたいし。 「ねぇサラ。この後さ ――――――」 「ん? こんなところで何をやってるんだお前」 と、サラに話しかけようとしたら逆に後ろから誰かに話かけられた。 振り向くと・・・・そこにはなぜか白衣を着たお姉ちゃんが立っていた。胸ポケットにはノワールちゃんだけが入っている。 「え、何で白衣?」 「第一声がそれかね。これはバイトの仕事着だよ。それよりもお前、何でこんなとこいるんだ? サボりか」 「え、えと・・・・それはですね・・・なんと言うか」 まずいことになった。 そういえばここら辺はお姉ちゃんのテリトリーだったっけ。 ここで見つかってお母さんに告げ口されたら・・・・! 「ん・・・あぁ別に怒ってるわけじゃないんだよ。サボりなら私もよくやったさ。仲のいい三人組で遊びまわったもんだ」 そういってお姉ちゃんは笑った。 よかった。告げ口されたらどうしようかと。 「そっか・・・・そういえばハウちゃんはどうしたの? ノワールちゃんだけだけど」 「アイツは定期健診。今神姫用医務室にいるよ。それよりも、暇だったら一戦やらないか? 今バイトの方も暇だしな」 お姉ちゃんはサラの方をチラリと見ながらそう言った。 サラがどうかしなのだろうか。 「うん、いいよ。それじゃ筐体の方へいこう。・・・サラ、おいで」 「承知です」 断る理由の無い私達はお姉ちゃんの誘いに乗った。 戻る進む
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姉さまは強い 槙縞ランカーには、その神姫本来の属性を外れた武装を使う者が多いが、その中でも姉さまはある種格別だ 姉さまは強力な武器を使わない 本来ストラーフはパワードアームやパワードレッグを使った白兵戦が強力なタイプだろう・・・が、姉さまがそれらを使っているのを見た事は無い 武器セットや改造装備の中からでも、姉さまは拳銃やナイフ等、普通に手動で操作出来る簡単な武器しか、使っているのを私は見た事が無い 常に自分の価値観での格好良さを第一に武装をコーディネイトして出撃し、遊びながらでも必ず勝って帰ってくる 姉さまは私にとって、マスターである以外に憧憬の対象でもあった だから、使わない本当の理由を、考えた事は無かった 「使わない」のではなくて「使えない」のかも知れない等と、考えた事も無かった 第拾壱幕 「MAD SKY」 ばらばらと、私の周りに無数の武器が現れ、あるものは転がり、あるものは闘技場の床に突き刺さる マスターが戦闘に参加出来無い以上、サイドボードを利用するにはこういった形で、バトル開始時に一斉転送してもらうか、戦闘中に私がマスターに指示するしかない だが、この『G』相手に後者のやり方では間に合わないと判断した私は、サイドボードのありったけの火器を一斉転送してもらう事にした 相手に使用される危険性がある以上、普通なら誰もやらないだろうが・・・ 「・・・!!」 案の定、出現した武器には目もくれず一直線に此方に走って来る『G』 それだけ自分の闘法に自信があるのか、それとも ・・・・単に『使えない』のか・・・・ 兎に角、ジグザグに武器の丘を走り回りながら、手に付いた火器を打ち込む事にする こういう手合いには先手必勝・・・だ 『仁竜』の大刀を素手で粉砕した以上、白兵戦になったら多分勝ち目は無い ならば精度は落ちようとも、弾幕で削り殺す!! 唸る短機関銃、榴弾砲、ライフル、機関銃 半ば喰らいながらかわされる、爆風をかえって跳躍力に加算される、僅かに装備した装甲でいなされる、マント(私のと同じ防弾か!)で防がれる 無茶苦茶だ!動きは全く出鱈目だし、それ程速くも無いが、『G』は自身の身を削りながらも、私の全ての攻撃を回避している 否、違う 奴が回避してるんじゃない 私が怯えているからだ・・・心のどこかで、こんな攻撃で奴は死なないんじゃないかと思って怯えているからっっ・・・! 爆風を切り裂いて、殆ど満身創痍の姿に見える『G』が私の懐に入って来ている 「・・・あ」 「ひとつ」 鈍い音がした 「いやああああああぁぁぁぁぁぁぁ姉さま------------っ!!」 びっくりする程の声・・・絶望の片鱗を感じた時、人は叫ぶ 神姫は人の真似をする様に作られた だから彼女も叫んでいる その精巧な絶望を感じている心がプログラムされたものであろうとも プログラムされたものであろうとも「心」は「心」だ 席を立つ 「もう見ないのですか?マスター」 「あぁ、もうけりは付いただろう。この試合を見る為に僕は来たからね・・・別に残りたいなら君の意思を尊重するけど」 「ならばマスター、この闘いはまだ終わっていない。見届けるべきだ」 「!?」 勝敗のコールは確かに行われていない 何よりも、大きく吹き飛ばされた『ニビル』に向かって『G』は走り出している 「馬鹿な・・・どうやってあの攻撃をしのいだんだ?『G』の攻撃は甲冑も貫くのだろう?」 「マスター自身が言ったではないか・・・ニビルの、『Gアーム』だ」 意識はあった バーチャルスペースの方に、である どうやらデッドの判定は下されなかった様だ どうも私は闘技場の壁面に埋まっている状態らしい 体の状態は・・・ (片脚が・・・無い・・・!?) 恐ろしいパワーだ・・・武装神姫の細腕では装甲を付けていてももたないと踏んで、ヒットポイントをずらしてかつ脚で受けたのだが・・・ 太股の辺りに残骸を残しつつ、私の右脚は見事に砕け散っていた。ついでに横腹にも痛みがある・・・明らかに衝撃でボディスーツが引き千切れていた まだ動けるなら闘おうとも思っていたが、これでは死んでいないだけで、戦闘は不可能に近い 普通こういう状況になったらジャッジングマシンが私の敗北を宣言するのでは無いか・・・?と、思考は迫り来る破砕音で途切れた 「ふたつ」 粉砕される瓦礫と共に、再び大きく外に放り出される 床に叩き付けられ、呻く・・・だが今はその痛みについて考えている場合ではない (やっぱり・・・数えている?) なるべく攻撃の手を控えているのは、一撃必殺に誇りがあるからでは無いのではないか? あのパンチの速さと威力ならば、私の銃撃の幾つかは拳で迎撃出来た筈だ(余りにも想像したくない光景だが、多分可能だろう) だがそれをせず、危なっかしい方法で回避した (しかも数えている・・・という事は) 結論はひとつ、彼女の『Gアーム』は私のそれと同様に、使用回数制限があるのだ ならば、勝ち目はあるかもしれない ただ 問題となるのは その勝利を手に入れる為には恐らくもう私には たったひとつの手段しか残されていない事 この闘いは 多くの代償を支払ってまで 勝つ必要のある闘いだろうか? 『G』が迫る 私には・・・ 『そうよヌル。準決勝で会いましょ』 理由は、それで充分だった 「マスター!残りのサイドボードを一式、送って下さい!!」 いつもそれを、サイドボードに入れてはいた(ただ、そもそも私は、サイドボードを使って闘う事自体が初めてだったのだが) だがその装備を、私は封印していた 理由は簡単 その装備を使うと危険である事が、私のオーバーロード、「ゴールドアイ」の「代償」だからだ マスターは、知っている 私がこのオーバーロードを入手した時に、神姫体付けの拡張装備を使用すると、神経系が破損してゆく体になってしまった事を マスターは、知らない 残りのサイドボードとは即ち、“サバーカ”、“チーグル”、DTリアユニットplus + GA4アーム・・・まさにその体付けパーツである事を・・・! 電撃を受けたような衝撃が、私の体を貫いた 「結果、出ました」 「で、どうだった?」 暗い部屋でパソコンのモニタに向かっていた男が振り返る 逆光で、本当におぞましい怪物か何かに見えた 「実質上の未来予知が可能な『ゴールドアイ』の前には、いかな『ジェノサイドナックル』とて無意味です。『ニビル』の勝利に終わりました」 事務的な口調で応える・・・この男の前では彼女はいつもそうしていた 「ニビルは『ゴールドアイ』を使ったのだな?」 ねちこく、重ねて男は問うた。満足のいく応えに対し、数瞬自らの考えに沈み、すぐに口の端が吊り上る 「ククククク・・・ふはっはっはっは・・・・・・!ならば良い!これで少なくともあの筺体は、現状で望み得る最良の蟲毒壺としての状態になったわけだ!フハハハハハ!!」 「闘うがいい!木偶人形ども!俺の・・・俺の『G』の為に!!!」 高笑いと独り言を繰り返す男を見ながら、キャロラインは拳を硬く握り締めた 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ
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「…見たトコバッテリー切れだな。一応ちまちま充電した形跡はあるが、満充電まではしてないね。おおかた古い型式のクレイドル使ってたんだろうさ。」 ホビーショップ『165-DIVISION』。 中央線沿線でありながら、イマイチ開発が行き届いていない某駅の南口の古いビルの地下にその店を構える、武装神姫中心のダーク系ショップだ。 大して広くも無い店の中は壁から床から真っ黒に塗られ、時々返り血を模したものか真っ赤な塗料をブチ撒けてある。 商品にしても、これまた隅から隅まで店オリジナルと思しきオノだ鉈だチェーンソーだスパイク付き首輪だ(しかも全てご丁寧に返り血ペイント付き)と、アングラ系アクセサリーで満載。 それも全てが神姫向けだというのだから呆れるというか徹底しているというか。 ……まぁよく見れば正規部品も半々ぐらい置いてあるので、一般客も考慮はしてるんだろうが。 これで実は公式公認店舗なんだという。 入り口には蜘蛛の巣やらドクロやらのステッカーに混じって、公式小売店舗を示すラベルが燦然と浮いていた。 なんでも秋葉原の専門店や、その筋じゃ有名なコギトだかエルゴだかいうホビーショップに比べれば規模は小さいものの、そこそこのバトルスペースまで確保しているってんだから驚きだ。 …一体どこにそんな金があったのやら… そして目の前では、カウンター越しにオーナー兼店主である高校時代の友人がこっちをジト目で睨んでいた。 片目に刀傷みたいな珍妙なメイク。服のあらゆる所にチェーンだのリベットだのじゃらじゃらつけたその姿は一種異様で、当時の真面目そうな雰囲気はカケラも残っちゃいなかったが。 「…で、慎。十年ぶりの再会だっつのに、挨拶もそこそこに「神姫直せ」てのはいくらなんでも酷くない?しかも営業時間外だぜ?」 「……あぁ。悪かった。スマンな縁遠。」 俺のあんまりといえばあんまりな返しに、友人…縁遠は溜息をついて苦笑した。 「まぁキミらしいっちゃらしいけどさ。とりあえずあの子だったら大丈夫だよ。中途半端な充電繰り返したせいで電池ヘタってただけだと思うから。」 当時から変わらずこっち方面の腕は確かなようだ。見た目はどうあれ、専門ショップを開いているのは伊達じゃないらしい。 「あとは…ホコリとかで結構汚れていたからクリーニングしてあげて、新しい電池に換えてきちんと充電してあげれば問題はないよ。…それで、こっから本題なんだけどさ。」 来た。握った手に嫌な汗を感じる。 「あの子はキミの神姫じゃないな?どこで拾った?」 縁遠はまっすぐにこっちを見た。 そこだけは昔と変わらない、澄んだ目をしていた。 「…実はな」 ここで俺は、サムライに逢ってからの事を包み隠さず話した。 そして、一つの頼み事も。 「……そりゃ本気で言ってんの?」 「冗談で言えるかこんなこと。実際、お前くらいしか頼れないんだよ。」 しばし睨み合い。 最初に目線を外したのは縁遠だった。 「わぁかったよ頑固モノ。できる範囲でやってやるさ。」 「……済まない。」 「でも、僕ができる事は調べるだけだ。そっから先は関与しない。いいね?」 「ああ。」 …と、一息ついたら腹が鳴った。 そういや晩飯食ってなかったなぁ… 「飯も食わずに来たのか。」 「うっせーよ笑うな。」 「まぁちょっと待ってな…ドリュー、ステーシー、お茶ー」 縁遠が呼ぶと、カウンターの奥の方からかたかたと…紅茶とスコーンを持った神姫が二体出てきた。 片っぽは浩子サンのモモコと同じゾンビ型。 もう片っぽは、ゾンビ型と同時に発売されたという処刑人型だ。 ゾンビ型同様ビジュアル面での問題があり、全くと言っていいほど出回らなかったという。 …こうもちょくちょく見かけるんじゃ、レアリティもクソもないんだがな。 店の雰囲気にやたらマッチした二体は、ゾンビ型の『ステーシー』は縁遠へ。処刑人型の『ドリュー』は俺の方へと背中につけた大きな腕で、器用にお茶の準備をした。 店の雰囲気にまるで合わない、上品なティーカップの中身を一口すする。美味い。 一応礼を言うとドリューは照れたのか、頭につけたホッケーマスクを目深に被って、ギギギだかゲゲゲだか金属を擦り合わせたみたいな音を立てた。 ……やっぱり笑ってんだろうかコレは。 「どうだ、可愛いだろ?」 カカカカカと笑うステーシーを前に、心底得意げに言う縁遠。 …すまん。やっぱ俺にはよく解らん。 その後、サムライの処置が一通り終わる頃には終電も過ぎ。 おまけに「遅ればせながら開店祝いだー!」とか喚く縁遠にしょっ引かれて、朝まで飲むハメになる。 まぁ久々に会ったことには違いないので、なんだかんだで日が昇るまで飲んで語り明かした。 翌朝。調べがついたら連絡するというので、俺はサムライと充電用クレイドルを持ち家へ帰った。 …ちなみに言うまでも無く、補修代及びクレイドル代はしっかり取られたが。商売人め。 --- 「……ん?」 「お、起きたか。どっか痛いとことか動ないとこむぐゃ」 問答無用で蹴られた。 「いきなり何しやが…!」 「なんで助けた。」 硬い口調だった。……まぁ当然か。 「今までだってアタシ一人でやってきたんだ。いつでも野たれ死ぬ覚悟くらいはあった!手前ぇなんぞにお情けもらう謂れは…!」 「だったら俺の前で倒れんじゃねぇよ。」 今度はサムライが黙った。 「…俺はな。お前さんがどこの誰かは知らんし、どこで野たれ死のうが知ったこっちゃねぇさ。」 「………」 「でもな。助けられんのが嫌なら俺の見てる前で倒れんな。目の前で死なれたりしちゃ寝覚めが悪ぃっつーか、飯がマズくなるんだよ。」 「………」 お互い黙り込む。沈黙が痛い。 「……ンだよ。なんか言えよ。」 「偽善者。」 「否定はしねぇ。」 「何様だってんだ。」 「俺様だ。文句あるか。」 「馬鹿だろ手前ぇ。」 「男は大体、馬鹿なモンだ。」 「青瓢箪。」 「職業病だ。」 「唐変木。」 「それがどうした。」 「甲斐性なし。」 「…関係ねぇだろ。」 「種無しカボチャ。」 「ぶっ壊すぞガラクタ!」 また沈黙。 そして、サムライは堪え切れずに吹き出しやがった。 「………くっせぇ台詞。」 「…………うっせ。笑うな。」 何故か笑うサムライに、耳まで真っ赤になった俺がいた。 ……多分これが一生の不覚ってやつなんだろうか。 エピローグへ
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先頭ページへ 装備構成解説 マイティ超高速巡航装備 軽量飛行装備 機動戦闘装備 シエンATパイロットスーツ装備 クエンティン瞬間移動装置活用装備 マイティ 超高速巡航装備 頭部:ヘッドセンサー・アネーロ 胸部:FL012胸部アーマー 背部:リアウイングAAU7 エクステンドブースター×2 VLBNY1スラスター×2 ランディングギアAT3(補助スラスター付バージョン)×2 ポラーシュテルン・FATEシールド×2 VLNBY1増設ラジエーター VLBNY1携行小型タンク ぷちマスィーン・シロにゃん (GEモデルLC3レーザーライフル) 上腕部:VLNBY1腕部アーマー 下腕部:左/FL012ガードシールド、右/M4ライトセイバー 大腿部:VLNBY1脚部アーマー 脹脛部:VLNBY1収納ポケット 脛部:WFブーツ・タイプ・クレイグ 武装: スティレット短距離空対空ミサイル×4 カッツバルゲル長距離空対空ミサイル×2 STR6ミニガン、もしくはアルヴォPDW9 登場時期:「強敵」~「固執」、「ねここの飼い方、そのじゅうさん、後半」 対アラエル戦、クエンティン遭遇戦の序盤など、初期によく用いられた構成。まだ煮詰まっていない段階の、雛形とも呼べる構成が対ルーシー戦でも登場している。 ありったけの推進装備をリアウイングAAU7に取り付け、推力を一方向に向けることで絶大な加速と最高速度をたたき出すことができる。推進器の取り付け方には変遷があり、後になるほどパワーロスが少なくなる(写真は初期の配置)。装備も射程の長いものを中心に取りまとめ、特に最終段階で片翼に懸架していたLC3レーザーライフルの長時間照射は前方の目標掃討に効果が高い。 本装備はアーンヴァルのもともと持っている高速飛行性能をさらに特化させることに成功しているが、同時に欠点も倍化させてしまっている。小回りはもちろん利かず、片腕にライトセイバーを付けているとはいえ近接戦闘は原則ご法度。さらに推進設備を全てリアウイングに集中させているために、推進器がどれか一つでも損傷してしまうとたちまち全体バランスの低下を招き、戦闘力が大きく削がれてしまう。バトルにおいてどんなに性能の高い神姫といえど、一発も被弾せずに戦う、などというのはほとんど無理な話なのである。 良くも悪くもピーキーに着地する結果となり、これ以上の発展を見込めないと判断したマイティとマスターは、飛行能力というアーンヴァルの特性を生かしたまま、より戦闘に適応する装備構成を模索してゆくことになる。 試行錯誤の末、現在以下の二つの構成が登場している。なお、すべての装備にほぼ例外なく取り付けられているぷちマスィーン・シロにゃんは、主に装備の制御や索敵などを担ってマイティの負担を軽減する、いわばフライトオフィサーである。 軽量飛行装備 頭部:ヘッドセンサー・アネーロ(棘輪) 胸部:FL012胸部アーマー(争上衣、ぷちマスィーン・シロにゃん搭乗) 背部:白き翼 上腕部:VLBNY1収納ポケット(なし) 下腕部:M4ライトセイバー×2(FL012増設アーマー) 大腿部:ハグダンド・アーミーブレード(なし) 脛部:ランディングギアAT3(脚部機能停止のため排除) 武装: カロッテTMP (忍者刀・風花、ぷちマスィーン八体) ※( )内は「信念」における装備 登場時期:「固執」、「信念」、「ねここの飼い方、そのじゅうさん、後半」 もともと白き翼のテストのために考えられた構成で、翼の性能を最大限に生かすためかなりの軽装となっている。クエンティン遭遇戦においては「装備B」として、変更されたフィールドに対応するために登場した。また「信念」の対クエンティン戦においては、序盤はストラーフのリアユニット GAアーム、GAレッグを用いた陸戦特化装備であったが、戦闘中脚部機能が死んでしまったために脚部を丸ごと排除して本装備となった。その折もともとの素体装備は変更していないため、防御力重視の構成となっている。 軽快さを生かした格闘戦が得意であったが、性能的にどうしても中途半端にとどまってしまうくせがあり、メイン装備としてはほとんど使われていない。 機動戦闘装備 頭部:ヘッドセンサー・アネーロ 胸部:ホーリィアーマージャケット 背部:レインディアアームドユニット・タイプγ(基部) ハイパーエレクトロマグネティックランチャー×2 バインダー(リアウイングAAU7) ハグダンド・アーミーブレード ぷちマスィーン・シロにゃん 下腕部:M4ライトセイバー×2 脛部:ランディングギアAT3 FL012ガードシールド 推進器付主翼(リアウイングAAU7) 武装: アルヴォLP4ハンドガン カロッテP12 スティレット短距離空対空ミサイル×4(サイドボード供給により発射可能総数は60発以上) 登場時期:神姫たちの舞う空編 アーンヴァルの飛行特性を維持したまま、戦闘適応性を上げるために考案された構成。メインの推進力が背部ではなく、脚部に移行されているのが大きな特長。ヨーロッパの軍隊によく見られるデルタ翼戦闘機のようなシルエットとなっている。 超高速巡航装備と比べて推進力は低下したものの、全体的にコンパクトにまとまっている。そして主翼が360度回転可能で、マグネティックランチャーとバインダーが四つのスタビライザーの役目を果たし、デルタ翼でありながら「低速域における機動性と安定性が低い」という欠点をカバーできている。結果、戦闘機にはできない奇想天外なマニューバーが可能になっている。 なによりも、ホーリィアーマージャケットの小型スラスターやマグネティックランチャーの電磁浮遊推進システムなど、脚部以外のボディ全体に推進器を配することによって、多少の損傷でも戦闘が続行できる優秀なダメージコントロール性能を獲得できたことがこの装備の功績として大きい。 未知数の部分がまだまだ多いが、本編における今後の活躍が大いに期待できる装備構成である。 シエン ATパイロットスーツ装備 頭部:頭甲・咆皇 胸部:VLBNY1胸部アーマー 上腕部:VLBNY1腕部アーマー 下腕部:VLBNY1リストガード 腰部:KT36D1ドッグテイル 大腿部:VLBNY1脚部アーマー 脛部:WFブーツ・タイプ・クレイグ 武装: 十手 カロッテP12 モデルPHCハンドガン・ウズルイフ 登場時期:「バトリングクラブ」、神姫たちの舞う空編 非公式の「ボトムズin武装神姫バトル」において、クリムゾンヘッドに搭乗する際シエンがまとう装備。ヴァッフェシリーズのアーマーは衝撃吸収に長けながらかさばらないため、パイロットスーツとして最適であった。 緊急時の武装として十手や拳銃をコクピットに持ち込んでいる。 ちなみにクリムゾンヘッドの主武装はベルトリンク式に改造し装弾数を増やした咆莱一式である。 クエンティン 瞬間移動装置活用装備 頭部:フロストゥ・グフロートゥ 黒ぶちメガネ 胸部:胸甲・万武(ぷちマスィーン・壱号搭乗) 上腕部:フロストゥ・クレイン 下腕部:FL013スパイクアーマー01 腰部:VLBNY1腰部ベルト 大腿部:FL013スパイクアーマー02 脛部:WFブーツ・タイプ・クレイグ 武装: サイズ・オブ・ザ・グリムリーパー ぷちマスィーン・肆号 ぷちマスィーン・オレにゃん 登場時期:「固執」、「信念」 瞬間移動装置とは厳密には装置ではなく、バーチャルバトルアクセスシステムの隙を利用した高速移動方法であり、あたかも瞬間移動しているように見えるためそう呼ばれる。また本装置によって空中移動も可能である。クエンティンのオーナーである理音が考案しセカンドバーチャルバトルにて使用していた。本装備はその瞬間移動を最大限活用するための構成である。 頭部、上腕部のフロストゥブレード、および下腕部、大腿部のスパイクアーマーは可動し、四肢とあわせて動かすことで限定的ではあるが瞬間移動後のアクロバット機動や体勢安定のためのバインダーとして働く。 主武装がサイズ・オブ・ザ・グリムリーパーと二体のぷちマスィーンだけというやや心もとない内容だが、これは瞬間移動装置の構成上サイドボードに神姫本体を入れねばならないため、武装の容量が限られてしまうためである(開始時の武装を入れるメインボードは空であるが、アクセスポッドには神姫が入れられていないため、武装を入れてもシステム側から「装備不能」と判断されエラーが発生する。そのためメインボードは使用できない)。ただ、瞬間移動のアドバンテージが非常に大きいため、この武装だけで十分という見方もある。 その後どこからともなく(おそらくネットから)瞬間移動の方法が解析され数多くの神姫がこの方法を使用したが、ゲームバランス崩壊の兆しが見えたためにオフィシャル側によってバーチャルバトル空間アクセスルールが改正され、実質使用禁止となってしまった。 そのためクエンティンの本装備はおそらくもう見ることは無い。 先頭ページへ
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ホワイトファング・ハウリングソウル 第十九話 『砕かれた未来~The broken future~』 時は少し遡る。 ぽつりと、アメティスタの頬に水滴が当たる。 それが都か或いは自分の涙か、それとも雨か・・・アメティスタにはわからない。 「・・・・言いたいことは、それだけ・・・?」 都は、そういうと右手を大きく振りかぶる。 「駄目だ! マスター!!」 「マイスター!!」 都がやろうとしていることを理解したハウとノワールが止めようとするが、もう間に合わない。 大きく振りかぶられた右手は、ほんの一瞬、躊躇するように止まってから 「――――――――――――――!」 勢いよく、振り下ろされた。 ・・・・・・・・アメティスタは、ゆっくりと目を開ける。 自分の体がまだ無事であることに疑問を覚え、横を見る。 そこには都の手があった。 「・・・・壊さないの?」 その手をみながら、彼女は言った。 都は何も言わない。 「・・・・ボクは、キミになら壊されてもいいと思ってたんだけど」 「・・・・・・・・・・いだろう」 と、都が何かを口にする。 「・・・・殺せるわけ、無いだろう・・・!」 都は・・・都は泣いていた。 雨の中でも判るくらい、泣いていた。 「どうして? ボクは武装神姫・・・ただのオモチャだ。それに殺すんじゃない。壊すんだ」 「・・・私は、ハウとノワールを家族だと思ってる。・・・・サラとマイは友達だ・・・!」 「ボクたちを人間と区別していないのか。それは単なる誤解と錯覚だ。ボクたちとキミ達じゃ根本的に・・・・」 「そんなことは判ってる」 都はそういって、アメティスタを押さえつけていた左手を離す。 「・・・・・でも、殺せない」 「・・・・なぜ?」 「・・・・そんな泣いてる奴を、殺せるか」 言われてアメティスタは始めて気づく。 彼女の頬は・・・涙で濡れていた。 「・・・・・・・・・どうして」 「そんなもの私が知るか・・・畜生ッ!」 そういうと都は持っていた石を川に向かって投げつける。 大きな音がして、小さな水柱が上がった。 「・・・よかった。マスター・・・」 「・・・・ん」 と、都を止めようとしていたハウとノワールが溜息をつく。 「・・・悪かった。ついかっとなってな」 その様子を見て都はすぐに謝った。 間違いを起こす前に本気で止めようとしてくれたからというのもあるが、やはり心配をかけたからだろう。 都が謝り、発言するものがいなくなり場を静寂が包む。 その静寂を破ったのはやはり都だった。 「・・・・お前、壊れてなんていないだろう」 その言葉はアメティスタに向けられたものだった。 「・・・・どうしてそう思うのかな?」 都の言葉にアメティスタはそう返した。 「簡単だ。お前、私を怒らせようとしてたな? 昔の事を思い出させて怒らせて・・・自分が真犯人だって言って。そんなことを言われたら私がどうなるか、判っていたんだろう? 小さな予言者さん」 今までのお返しとばかりに皮肉たっぷりに都は言う。 「どうなるか判ってて何故私にそんなことをするのか。何故罪の告白がしたいのに、相手を怒らせるのか。それが判らなかったが・・・お前、もしかして殺して欲しかったんじゃないか」 アメティスタは答えない。 しかしそれは肯定と同義の無言だった。 「さっきの話だと“壊れてるからアシモフコードを無視できる”はずだ。だったら自殺だって・・・できるはずだ。じゃぁなんで私に殺させようとする? それは・・・お前が壊れてないからだ」 「穴だらけで推理とも呼べない。それは殆どがキミの妄想と傲慢と身の程知らずから来た考えにしか思えないね」 ようやくアメティスタが口を開く。 「そもそもボクが自殺したがってるって根拠は何さ。それにボクは衛にぃを・・・殺した。これで壊れていないわけが・・・」 「アシモフコードが未来予知とか、そんな事にまで対応できるわけ無いだろう。元々コードには抵触しないんだよ。・・・・衛のことはな」 「・・・・ボクが見た程度の事じゃ、マスターの死に直結するとは判断されなかったってこと?」 「そうだ」 都は肯く。 アシモフコードは今更言うまでもなくロボット三原則の事だ。その第一条・・・『ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危害を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない』にアメティスタの予言は抵触するか否か。 するわけが無い。 それはまだ起こっていない事、起こるかどうかすらわからないこと。 そして何より・・・予知は果たして神姫のアシモフコードに認識されているかということ。 「アシモフコードに認識されなければそれはプログラム的には“無い”ことにされるんだろう。もともと予知そのものがイレギュラーな要素だから認識されないのはある意味当然といえる」 「・・・つまり、あれは不幸な事故だったというの?」 「そうだ。アイツが死んだことで、誰か悪者を作り出すなら・・・車の運転手以外にだれもいやしないってことさ」 都はそういって黙る。 雨は、少し酷くなってきていた。 「・・・キミはそれで、納得できるの?」 「理解できないものに何か理由をつけ、理解した気になる。それが悪いこととは言わないがね。納得するさ。だってあそこで・・・私の目の前で起きた出来事には、お前が介入する余地なんかないんだから」 都は迷い無くそういいきった。 それは・・・アメティスタの罪を、許すといっているのと同義だ。 「・・・はぁ。また死に損なっちゃった。いい加減、衛にぃの所に行きたいんだけどな」 「やっと本音を言ったなこの馬鹿魚」 アメティスタのその言葉に、都はキシシと笑う。 その笑顔に偽りは無く・・・本当に楽しそうだった。 「・・・なぁ。お前、今何処に世話になってるんだ」 「山下りたとこにある神社だよ。・・・・ボクを引き取るってんならお断りだよ。ボクは今のこの生活が気に入ってるんだ」 「お見通しか」 「・・・ま、たまには遊びに行ってもいいけど」 「・・・・クク、素直じゃないな」 そういって更に笑う都。 雨はもう・・・・降っていなかった。 前・・・次
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あの、白い刃を持った同類の少女。 ただ、違うのは、彼女は強い。 そして、自分の中のパルスが、沸き立つ。 ―――ああ、私は武装神姫なんだなと、思った瞬間である。 ちゅんちゅんちゅん 冬は過ぎ、春が来たと言うのに…………まだ寒い、そんな三月手前の日。 「ん……んうう?」 どれどれ……まだ寝ておるな、ふふ 「……?」 ふむ、やはり夜討ち朝駆けは基本だな、どれどれ。 さわ、とこう、暖かい感触が、なんと言うか。 「うおっ!?」 寸前で目を覚まし、慌てて頭を振る。 「……ち、起きおったか」 「ディス……なにしてんの?」 ズボンは下げられて、こー、危険一歩手前、というか、まあ、朝の元気の象徴が。 「――――神姫たるもの、朝の奉仕は基本だろう?」 艶かしく、舌をちろ、と魅せる。 「……勘弁してくれ」 流石に前屈み、仕事前に精力抜かれたらたまらん。 「―――残念じゃな」 ふ、っと笑う、ディス……ってこー上目で見るなこー欲しそうにっ、あー、あー!? 「天国に、連れて行ってやるぞえ?」 ちょっと、揺れた、というか更に危険領域にっ!? 「―――」 殺気、つーか、ピンチ!?、助けてピンチクラッシャー!? 何見てるつーかいつの間にか起きたんですか碧鈴さん!? 尻尾立ってるし、こー、なんだ……髪の毛逆立ってるっていうかこー!? 「マイロード」 爽やかで、朝の起きるときに相応しい、優しい声 「は、はひ」 即答且つ、瞬時に背中を正す。 「…………天国へ行きましょうか?」 砲莱向けながら言わないでくださいっつーかだんだんと近寄らないでー……って、え? 「……」 凍ってる、碧鈴さん……。 「……ふふふ」 笑っている、ディス。 「ん?」 ……えーっと、まあ、なんだ、原因は朝で寝起きで、そしてそのまま起立なんてしてたから―――― 「―――せ、せいよくのごんげっこのへんたいすけべしんきになによくじょうしてるんですかこのどへんたい ぽるのやろういいかげんにしてくださいもうだいたいじゅんじょからいえばでぃすよりわたしがさきというか わたしもまいろーどがのぞみならいくらでもというかこれじゅうはちきんれーといいんですかいいんですなら いろいろされるのもやぶさかじゃないですというかむしろしてくださいというか」 と、真っ赤な顔でぶつぶつという碧鈴。 「???」 正直、わけがわかりません。 「……碧鈴、本心までだだ漏れだぞ」 ディスは、どーやら聞き取ったらしい。 「―――」 ぼふん、っと顔を真っ赤にした、碧鈴は 「―――きっ、記憶を失えっ、まいろーどっ!?」 周囲に、大量の影……これは、ぷちマスィーンズ、うちにいるのは24体。 「24体……セット、一斉射撃……ファイエル!!」 職場の仕事を終え……取りあえずエルゴへ、ディスの顔見世もしないとな、と。 ……あ、れ? 「有難うございましたー」 なんで、俺、爽やかに、店員さんしてるん、だろ。 「……あむあむ」 碧鈴はもしゃもしゃ、と頭の上でポテチ一袋を貪っている、機嫌よく、尻尾を振って。 買収されたな……。 いきなり先輩に、ちょっと店換わってくれって言われてやってみれば―――はぁ ……まあ……それが「G」の仕事ならしょーがない。 とらぶった時には力になるのが俺の仕事だ。 「どないしはったん、はーちゃん」 「ちゃん言うなラスト」 「この体のときは、凛奈って呼んでくれいうたろ?」 耳を引っ張られる、いだだだ……こいつは、Dフォースのラスト。 現在は「人型なんとか」に入ってるらしいが興味はない、というかまあ、別になんとも…… 俺の厄介な上役様の一人、というかぶっちゃけ、Dの面々のぱしりの俺は立場が弱い。 「……で、凛奈さん、どしたの?」 「んー、ちいとな、働いてる若人に、お礼っちゅーやつや」 手には缶コーヒーがほかほかと湯気を立てて。 「あ、ありがとうございます」 ふう、と客も引いて、ひと段落ついた時なので、ありがたく口をつける。 「ぶううっ!?」 「ん、どしたー、乙女の入れたコーヒーが飲めへんかー?」 「……何入れました?」 「んー、そやねえ、マムシドリンクとか、本当は夏はんに使って後押ししよーかと思うてたんやけど」 ん?……彼女でもいるのかなあ、先輩さん。 「……そっちに、D-ソード、行ってるやろ?」 あ……ああ……なるほど、秋奈さんカスタムしてたんだから D、として使う気だったのを、俺に? 「まあ、今はディス、ですけど」 「……折角なんで暴走させて碧ちゃんと一緒に食べたらおいしそうかなぁ、と」 「怒りますよ?」 苦笑、この人はいたずら好きだ、知っているが性質が悪い。 「あはは、じょーだんや、疲れきった顔してるから、栄養ドリンク」 「……はあ、まあ助かりますけど……」 「マイロード」 碧鈴が、頭をの毛を引っ張る。 「ん、どうした?」 「……子供のないている声が」 「らじゃ、ラsじゃない、凛奈さん、ここ、任せます」 「了解~」 碧鈴の指示で、二階のバトルスペースへ 「……うわぁ、あ、やだ、やめてよぉ」 どうやら、子供を泣かすやつが居るようだ。 「へっへっへ、しょっぱいパーツ使ってるぜ、全くよお」 「仕方がナイでゴザルよ、餓鬼でゴザル」 あー、癇に障る声だ、こーいうの嫌い。 「何してるんだ?」 その辺に居た子供に聞く。 どうやら、こー、バトルロイヤルで力任せにサード上位の二人組みが、下位の始めたばかりの子を嬲っているらしい。 「ほら、ほら、逃げないと死ぬでゴザルよー?」 眼鏡を掛けた肥満体の男の操るアーンヴァルが足を打ち抜き。 「……あぁ?、ほらほら、舐めてるのか、ああ?」 茶髪を逆立てたモヒカンのストラーフが、相手の腕を、もぎ取る。 ――――見ちゃ居られん。 正義でもないが悪でもないが。 ―――これは、見ちゃおれん、だが全く戦闘訓練の無い、碧鈴を連れて行くには、と思った瞬間。 「儂を呼んだか、主?」 白い悪魔が、囁いた。 徒然続く、そんな話。 第六節 彼の理由、私の理由。 節終 続く 戻る
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左腕と左脚、左の乳房のみを「サイフォス」ベースの装甲で覆った姿でエルギールはヴァーチャルスペースに現れた 金管楽器の様な凄まじく派手な銀色の装甲は、今回のフィールドである湖畔の風景を見事に天地逆さまに写している 『随分軽装だな?まぁホントの白兵戦になりゃぁ神姫用の武器は「避けられない」方がヤバいって言うし、ある意味ありっちゃありか?でも所詮そんだけだろ?ビシッとキメてやろうぜ!華墨』 (確かに軽装だ・・・が・・・・) 武士の台詞を華墨は半分聞き流している ここ数回のバトルで、華墨は少しずつではあるが自らのデフォルト武装の取捨選択を始めていた 初戦の教訓と「どうせ相手に密着するのだから」という事で、十字戟もメインボードから外し、主力武装は腰の大小に、やや肩周りの可動を阻害する肩当を捨て、ジョイントを介して「垂れ」の部分だけを直接装備、鬼面と喉当ても外していた 最後の二つは今回のバトルに際して急遽実行したのだが、それというのもポッドに入る前にちらりと、エルギールの主力武装とおぼしきものを目にしたからだ それは剣呑な黒い刀身に、禍々しい朱い模様がうねうねと描かれた、非常に大振りなダガーだった(殆どショートソードと言っても良かったかも知れない) 神姫が外出する時に、手持ちの得物の中から携行に便利な物を選んで持ち歩くというのは聞いた事があるが、華墨には何故だか判らないがそれが「護身用の武器では無い」という強迫観念めいた確信があった それで、視界と装甲の二択に(勝手に)迫られて、結果折衷案で、「兜は残して仮面は外す」という結論に至った訳だ いずれにしても、未だに胸の奥をざわざわと撫でられる様な感覚はおさまらず、目の前の軽装な姿を、武士程楽観視出来無いのだった 第伍幕 「Merciless Cult」 自分と相手の戦力差がどの程度なのか?正確に把握するには結局ぶつかってみるのが一番良い。華墨は覚悟を決めた ざくざくいう足音と共に、バーチャルの下生えが踏み潰されてゆく。(いける、いつもの私だ)ポニーテールを地面に水平になるくらい迄浮かせながら華墨は走る。右手で太刀を抜き放ち、気合一閃、一気にエルギールに斬りかかる! 白刃が虚空に白い影を描き、華墨の天地は逆転する。遅れて知覚される苦痛 「ハン!速さと装甲にモノ言わせて真っ直ぐ突っ込んで殴るだけの、単なるゴリ押しじゃない!?案の定大した事無いわね?」 (なんだ!?何をされたんだ?今!?) 地面を抉る程に叩き付けられた華墨だったが、即座に立ち上がり、エルギールから距離をとる 「どうしたの?躓きでもしたのかしら?ホント情っさけ無いわね」 憎まれ口を叩くエルギール。その手に武器らしきものは握られていない。華墨が警戒していた短剣も、まだヒップホルスターの中だ 「・・・」 「つば」を鳴らして太刀を構え直す。いつもの様に、加速をつける為の攻撃型ではなく、切っ先を相手に向けた防御よりの型だ 「・・・アタシってそんな気が長い方じゃ無いのよね・・・来ないんなら」 ヒップホルスターから短剣を抜き放つエルギール。一瞬、朱色の模様が生物の様にうねった・・・様に感じた 「こっちからブン投げてやるまでよォ!!」 「!!」 明らかに短剣が届く間合いではなかった、が、エルギールの剣は鋼線で接続されたいくつかの節に別れ、異様な動きでもって華墨の左腕に巻き付いたのだ。食い込んだ刃が、華墨の人工皮膚を・・・裂く 「くそっ!!」 鋼鉄の毒蛇に腕を拘束されたまま切り込む華墨。だが、引き手を殺されたへたれた斬撃は、あっさりとエルギールの腕甲でいなされ、挙句そのまま首を掴まれる (・・・ぐっ!) くぐもった呻きが漏れる。それは人間的な条件反射だが、神姫が「人がましく」振舞う為に動きの基礎に組み込まれている 「けだものを捕らえるには罠を使うでしょう?アタシはその罠。さぁ、ホントのアタシのフルコンボってやつを見せたげるわ!!」 首を掴んだ左手が捻られる、同時に右足が払われ、左腕の拘束を引き外す動きでそのまま吊り上げられる (これが・・・!?) 「まずは天(転)」 異様な体勢で転ばされ、なんとか残った右腕で受身を試みる 「間に人(刃)」 ぞぶりだかどすだかいう様な汁っぽい音と共に、引き抜かれ空を舞っていた刃が右腕に突き刺さる たまらず、そのまま顔面から地に倒れ付す華墨。打撃系の衝撃が、装甲ごしにでも強烈なダメージを全身に及ぼした 「最期は地に血の花を咲かせて逝きなさいな!アンタの名前に相応しい幕切れじゃない!!」 エルギールの哄笑、無理矢理体を起こそうとする華墨だが、最早戦闘能力が無きに等しいのはいかなる目で見ても明白だ (立ち上がる・・・ちから・・・) 武士が何かを叫んでいた、残念ながら華墨には何を言っているのか全く判らなかったが・・・ (ここで立ち上がる・・・ちからが・・・) だが、そんな力は華墨の中には無かった。愛も、怒りも、不屈の意思も、未だ華墨は本当の意味で理解など出来て居なかった 虚ろに過ぎるジャッジのマシンボイスを、ヴァーチャルスペースに全く意識があるままに、華墨は聞いていた 「華墨・・・負けちまったのか・・・?」 武士は腰を浮かせて、呆然とディスプレイを見ていた その肩に琥珀の小さな、冷たい手が掛かる迄、武士は彼女が入ってきた事にすら気付いていなかった 「ね、判った?闘うってこういう事なんだよ。体はヴァーチャルでも、彼女らが感じる恐怖は本物なんだ。」 小さな、だがはっきりした声だった 「だって・・・武装神姫って、バトルする為に創られたんだろ?」 のろのろと首を回す武士。琥珀の、多分名前の由来なのだろう琥珀色の瞳は、感情を深い所に隠していて、思考を読み取る事は今の武士には不可能だった 「確かに彼女達は闘う為に創られた。でもね、闘争本能を持たされていても、彼女達が本当に闘いを望んでいるかどうかは判らないんじゃないかな?」 「・・・え?」 「判らない?君は彼女のマスターだけど彼女は本当の意味で『君の神姫』になっているのかな?」 「当たり前だ!神姫は登録した人間をマスターとする様に出来てるんだろ?」 語気を強める武士、だが琥珀の口調にも表情にも、僅かな変化も見られなかった 「プログラムされた知性、プログラムされた感情、なら、忠誠心だってプログラムされたものなんだろうね」 「・・・」 にこりともしない、が、別に怒りも悲嘆も、いかなる色も彼女の表情には現れないのではないかと、武士は思った 「・・・」 「プシュ」と空気の抜ける様な音がして、華墨のバトルポッドが開く ゆっくり顔を上げる華墨に一瞬目をやってから踵を返す琥珀 「じゃ、するべき事はしたから・・・縁があったらまたね・・・」 視線だけ二人に向けて言い放つと、もうそのまま、むにむにと柔らかい足音だけ残して琥珀は去っていった 「・・・負けてしまったよ・・・マスター・・・」 「・・・あぁ・・・」 ここで取って付けた様な労いの言葉を吐く事が出来るのか?吐く資格があるのか?労ってやるべき存在?神姫は・・・? 玩具にそれをするのか?人間にそれをしないのか? 「・・・無事でよかったよ」 武士は恐ろしくばらばらな表情でようやくそれだけ吐くと、華墨を抱え上げポケットに入れ、無言でブースから出るのだった 「見事な『壁』役だったね」 「僕は厭だよ。本当はこんな役なんて」 「買って出た苦労だろう?私は何も頼んじゃいない」 「・・・・・」 「・・・君にとってはどうなんだい?」 「何がさ?」 「神姫とは高性能な知性を持った玩具なのか・・・?身長15センチの人間なのか・・・?君が佐鳴武士に叩き付けた問いについて・・・だよ」 「・・・そういう話は川原さんとでもしてなよ。帰ろうか?エルギール」 主よりも遥かに派手な神姫を肩に乗せて去る少女を見ながら、皆川はいかにも意味ありげに不気味に微笑んで見せるのだった 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ
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ウサギのナミダ ACT 1-13 ◆ 「って、菜々子ちゃん! 大丈夫なのかよぉ……」 大型筐体に一人座り、黙々と準備をする菜々子に、大城はそわそわと話しかけた。 大城の心配ももっともだ。 このゲームセンターで最強と呼ばれる三人とスリー・オン・ワン……三対一の同時プレイで対戦するというのだから。 いくら有名なエトランゼといえど、実力者三人を同時に敵にするのは圧倒的に不利だ。 「大丈夫。絶対に負けない」 菜々子ははっきり言いきった。 ミスティは菜々子を見上げた。 「……『本身を抜く』のね?」 「そうよ。わたし、キレたから。もう徹底的にやる」 「やっとキレたの? わたしはもう先週からキレっぱなしなんだけど」 無表情に話す二人に、大城は空恐ろしいものを感じずにはいられない。 「なあ……ほんみをぬく、って、なんのことだ……?」 「見ていればわかるわ」 菜々子は筐体の向こう側にいる、三強の男達を見た。 三人とも、こちらを睨みつつ、バトルの準備をしている。 スリー・オン・ワンで相手をする、と言ったら、男達は激怒した。 「なめやがって……!」 捨て台詞を吐いて、バトルを承諾した。 菜々子の思惑通りに事は進んでいる。 頭に血が上っていては判断が鈍る。そして、三対一という圧倒的優位からの油断。 もちろん、それらを生かすための実力があってこその策略だった。 菜々子は、耳元のワイヤレスヘッドセットをオンにすると、マイクに囁きかけた。 「ミスティ、リアルモード起動。入力コード“icedoll”、タイプ・デビル」 菜々子は三強の男達をもう一度見て、そして目を閉じた。 意識を切り替える。 あれは『対戦相手』じゃない…… 『敵』だ。 再び菜々子が目を開いたとき、バトルの準備は整っていた。 三強とエトランゼのスリー・オン・ワン対決と知り、ギャラリーが続々と集まってきた。 都合がいい。 バトルの見届け人として、そしてバトル後の相手として、ギャラリーは多いほどいい。 うるさい連中は、実力で黙らせる。それがエトランゼの流儀だ。 「ミスティ、調子はどう?」 「問題ないわ、ナナコ」 勝つ。 菜々子には確信がある。 この程度のバトルに勝てなくちゃ、『ヤツ』を倒すなど夢のまた夢だ。 菜々子は鋭い表情のままスタートボタンを押した。 近代的なビルと、その間を縫うように走るハイウェイ。 都市ステージは立体的なバトルフィールドが特徴だ。 三強とエトランゼ、どちらも持ち味の生かせるフィールドとして、ここが選択された。 『ヘルハウンド・ハウリング』は、そのハイウェイのど真ん中で、正面と背後に気を配っていた。 『エトランゼ』が来るとすれば、やはりフィールドを横切って走る、このハイウェイだろう。 エトランゼは、トライク形態からの反転奇襲が得意技だ。 だから、防御力の高いハウリンのヘルハウンドが待ちかまえ、エトランゼを足止めする。 そして、後から合流した二人と、三人がかりで仕止める。 エトランゼは、ヘルハウンドもたびたび対戦したが、勝てない相手ではなかった。 それが三強をいっぺんに相手にして、かなうはずがない。 さあ、来い。 ヘルハウンドはハイウェイの先を鋭く見据えた。 ……まさか、待っている相手がビルの上から降ってくるとは、思いもしなかった。 「ぎゃっ!?」 強い衝撃と共に、いきなりうつ伏せに押し倒された。 振り向くよりも早く、背面に設置された二本の武装用アーム……ヘルハウンドの名の由来が、ばりばりと引き剥がされる。 何が起こっているのか。 そんなことさえ確認する余裕も与えられなかった。 エトランゼは、手にしたマシンガンの引き金を引き絞り、ヘルハウンドのアーマーが隠していない後頭部と腰に、まるでリベットの打ち込み作業をするように撃ち込んだ。 ヘルハウンドと合流すべく、『ブラッディ・ワイバーン』は滑空していた。 ウェスペリオーの素体と羽、脚から先がイーアネイラの魚型パーツになっている。 マスターが言うには、昔見た強い神姫の武装を参考にしているという。 確かにこの武装は、空を自由に飛ぶのに適していた。 空中から、足止めされているエトランゼを狙い撃ちにするのが、ワイバーンの役目だった。 だが。 下方から銃撃を受けた。 ワイバーンは驚く。 足止めどころか、エトランゼはハイウェイ上でワイバーンを待ちかまえていた。 あわてて、こちらも銃撃を開始する。 直後、エトランゼの緑色の副腕が何かを投擲した。 大きな何かが、ワイバーンを直撃する。 それは、ヘルハウンドの残骸だった。 「うわああぁ!」 バランスを崩し、高度を下げる。 そこに、間髪入れずにジャンプしてきたエトランゼが迫る。 剛腕一閃。 ワイバーンの右羽を根本からもぎ取った。 そして、その勢いを借りて反転し、さらに剛腕が振るわれる。 エアロ・チャクラムが、今度はワイバーンの素体を捕らえる。 力任せに掴むと、ハイウェイ脇に立つビルの壁に叩きつけた。 「あああああっ!」 ワイバーンはビルにめり込み、エアロ・チャクラムに押さえ込まれ、身動きがとれない。 逃げようともがいても、抜け出す術はなかった。 エトランゼが装備していた太刀を引き抜く。 視線が合う。 イーダ・タイプの赤い瞳は、まったく感情に揺れていなかった。 ただ、殺意だけが、込められていた。 ワイバーンが恐怖にすくみあがったのも一瞬だった。 彼女の胸に太刀が突き立てられた。 大城は息を詰めてバトルを見ていた。 背中に冷たい汗が流れている。 斜め前で筐体を前に座っている菜々子は、いつもと様子が違っていた。 いつもはミスティと楽しげにやりとりをしながらバトルしているが、今日はやけに静かだ。 指示用のワイヤレスヘッドセットに、小さな声で短くささやく。それだけだ。 そしてミスティは返答さえしない。 バトルは一方的な展開を見せている。 ミスティはこんなに強かったのだろうか? 今日の菜々子とミスティは何かが違う。 疑問と不安を抱きながら、それでも大城はバトルから目が離せなかった。 『玉虫色のエスパディア』は、もうバトルが終わっているかも知れないと思っていた。 三強二人を相手に、いくらエトランゼが強者とは言え、何分も持つとは思えない。 もう勝負の趨勢は決していることだろう。 低空から、ハイウェイの先の様子を見定めようとする。 確かに、勝負の趨勢は決していた。 ハイウェイの先、仲間二体の残骸があるのを目視した。 「ば……ばかな!?」 玉虫色は空中で急停止すると、逆向きに方向転換。 元来た方向へ加速する。 少なくとも、エトランゼはあの残骸のそばにいるはずだ。 とりあえず距離を取る。 それから対策を立てる。いままでも対戦して勝てない相手ではなかったはずだ。 だが、玉虫色の脳裏に、すでに残骸と化した二人の姿が浮かんだ。 ……まだ、バトル開始から、二分も経っていないじゃないか! 本当にエトランゼなのか!? そう思った玉虫色の耳に、ホイールの回転音が聞こえてきた。 まさか、と思って振り向いた瞬間、トライクが猛然とハイウェイを走って来るのが見えた。 ハイウェイの下道から、合流ラインを抜けて、メインのハイウェイへ。 トライク形態のエトランゼは、一気に加速すると、玉虫色を下から追い抜いた。 視線を前に戻したときには、すでにエトランゼはストラーフ形態に変形し、反転を開始していた。 リバーサル・スクラッチ。 まぎれもなく、エトランゼのオリジナル技だった。 エアロ・チャクラムが玉虫色に思い切り叩きつけられる。 仰向けに押し倒されたエスパディアは、組み替えてあった背部アーム装備の機銃を狂ったように乱射する。 それを意にも介さず、エトランゼは副腕を動かして、玉虫色の装備をむしりとりはじめた。 前輪のタイヤがはじけ飛び、副腕の装甲に弾痕が走る。弾丸がバイザーに当たり、頬をかすめても、エトランゼはいっこうに気にした様子がない。 まるで、意志がない機械のように。 黙々とエスパディアの装備を引き剥がしていった。 そして、素体だけの姿になったところで、胸のあたりを副腕の爪で掴みあげた。 その姿をさらすように持ち上げる。 「ひいいいいいぃぃっ! や、やめ……やめてやめてぇっ!!」 玉虫色は悲鳴を上げる。 しかし、エトランゼは一切表情を変えない。 菜々子が一言、囁いた。 次の瞬間。 「いやぁああああああああっ!!……」 断末魔の悲鳴が、無人の都市に響きわたった。 玉虫色の身体には機械の爪が食い込み、つぶされていた。 ハイウェイ上に無惨に転がるハウリンの残骸、ビルに磔になったウェスペリオーの残骸、そして、副腕の爪にいまだ引っかかったままのエスパディアだったモノ。 それらを背景に、逆光の黒いシルエットが立ち上がる。 ミスティが顔を上げた。 表情はない。ただ、殺気に満ちた赤い瞳だけが爛々と光って見える。 「あ、悪魔……」 誰かの呟き。 それと同時に、ジャッジAIがエトランゼの勝利を告げた。 試合時間は二分二十七秒だった。 アクセスポッドが開く。 ミスティは立ち上がると、筐体の回りのギャラリーを見渡し、そして正面の三強のマスターと神姫達を睥睨した。 誰も一言も発しようとはしない。しんと静まっている。 驚きと畏怖が、エトランゼの二人以外の意志を奪っていた。 ミスティは、先ほどのバトルの時とはうってかわった怒りの表情で怒鳴った。 「よわっちい連中が……こそこそ陰口叩いてんじゃないわよ!」 いまにも噛みつかんばかりに、周囲を威嚇している。 逆に、菜々子は氷のように冷えきった表情だ。 「宣戦布告よ」 薄く目を開け、三強に、そしてギャラリーに向けて宣言する。 「私たちは……エトランゼは、ハイスピードバニー・ティアにつくわ。 文句があるなら、バトルロンドで私たちに勝ってから聞いてあげる。 言いたいことがある人から……」 ミスティと菜々子の声が重なった。 「かかってらっしゃい!!」 ギャラリーがどよめいた。 いま、ハイスピードバニー・ティアを擁護するということは、このゲーセンの神姫プレイヤーだけでなく、すべての武装神姫を敵に回すに等しい。 菜々子はそれをはっきりと公言してのけたのだ。 「そ、そんなこと言ったら……誰も君の相手なんてしなくなるぞ!? それでもいいのかよっ!?」 ワイバーンのマスターの言葉はほとんど悲鳴だった。 菜々子はワイバーンのマスターを、氷の眼差しで睨みつける。 「上等よ……練習にもならないバトルなんて、こっちから願い下げだわ」 吐き捨てるように言う。 ワイバーンのマスターは、怒り心頭の様子だったが、ぐうの根も出ない。 他の二人も同様だった。 ギャラリーの目の前で、三対一で完膚無きまでに叩きのめされたのだ。三強としてのプライドも粉々に打ち砕かれた。 今、彼らが何を言っても、負け犬の遠吠えにしかならない。 三強のマスター達は、菜々子の激しい言葉にも、黙って耐えるしかなかった。 いまだに皆が立ち尽くしている中で、菜々子は黙々と後片づけをはじめた。 そこに大城が声をかけてくる。 「……ミスティってあんなに強かったのか……知らなかった」 その言葉に菜々子は首を振る。 「違う……あれはバトルロンドと呼べないわ。だから、あなたの言う『強さ』じゃない」 「け、けどよ……圧勝だったじゃねぇか。三強と三対一で勝つなんて、信じられねぇよ」 大城の声はうわずっている。 彼も感じているだろう。いつもと違うわたしたち。 いつもと違う、あまりに凄惨なバトルの内容に、引いているだろう。 「あれが、『本身を抜く』ってやつなのか? なんで……ミスティがあんな風に戦えるんだ?」 虎実が尋ねた。 菜々子は頷いた。 「『本身を抜く』っていうのは、真剣を抜いて戦うってこと。その心構えと戦い方で戦うってことよ」 大城と虎実は、よくわからない、といった顔をしている。 「そうね……剣道に例えればわかりやすいかしら。 防具着て竹刀でやる試合と、真剣での果たし合い。その違いってこと」 近代剣道の試合は、防具をつけ、竹刀を持ち、有効部位への打突をもって、審判が判定を下す。いわば模擬戦闘だ。スポーツであり、ゲームである。 対して、真剣での果たし合いは、防具はあるものの、持っている武器は真剣である以上、傷つくことは避けられない。攻撃がどこに当たろうとも、相手の戦闘力を奪い、相手を倒すことが優先される。つまりは命の奪い合いなのだ。 これを武装神姫に例えてみればどうか。 隆盛を極めるバーチャルバトルは剣道に当てはめられる。 ファーストクラスのリアルバトルでさえ、審判がいてルールがあるから、剣道の方に入る、と菜々子は考えている。 ルールの下で戦うが故に、バトルロンドにはそれに適したプレイスタイルが求められる。 「わたしだって、バトルロンドは楽しくプレイしたいわ。だから、バトルロンドに適した戦い方をするし、そういうつもりでプレイする。 でもね、『実戦』は違うの……つまり、真剣での果たし合いと剣道の試合が違うように」 菜々子の言う「実戦」は、ルール無用、審判なしのリアルバトルだ。バトルの結果が神姫の命に直結するような、紛れもない殺し合いである。 それは剣道の試合とは心構えからしてまったく違う。 「そうか……本身を抜くってのは、殺し合いをする気ってことのたとえなのか」 菜々子は頷いた。 「そう。 三強は剣道の試合をしようとしてるのに、わたしは真剣で彼らを殺そうと思っていたのよ。 そのためには自分のプレイスタイルにもこだわらないし、何より敵を早く確実にしとめることを優先する。 彼らは、あくまで「エトランゼとバトルロンドで試合しよう」としていた。 その心構えの差が、結果に現れたのね」 「なるほど……」 たとえ三強が、今度はミスティを殺すつもりで戦うとしても、それは結果につながらない。 なぜなら、彼らは「実戦」というものをまったく知らないからだ。 とするならば、菜々子とミスティは、その実戦を経験したことも、その心構えも、実戦向けの戦い方もあるということなのだが……。 「なあ、菜々子ちゃん……」 「本当なら、『本身を抜く』なんてこと、ずっとするつもりなかった」 大城の言いたいことを遮り、菜々子は早口でしゃべる。 「ここでは……遠野くん達がいるから、絶対にしないと思ってた。わたし自身の問題で身につけているものだし、バトルロンドでは使わないことにしてた。必要もなかった。 もしかしたら、もう『本身を抜く』なんて、忘れてもいい気さえしていたの。 ……でも、遠野くん達のために、自分にできることをすると、決めたから」 装備を片づけたアタッシュケースを閉める。 そして菜々子は大城に視線を移した。 「だから、わたしは全力を尽くす。本身だって抜くわ」 大城は菜々子の大きな瞳をみつめた。 真っ直ぐな視線。揺らがない。 誰かに似ている。 ああ、と大城は思い至る。 遠野だ。あいつの視線にそっくりだぜ、菜々子ちゃん。 大城は小さくため息をつきながら、頭を掻いた。 「まったく……惚れ直すぜ」 「それはダメ」 菜々子はいたずらっぽく笑い、人差し指を立てた。 「わたし、好きな人がいるから」 その笑顔を見て、大城はほっとする。 ようやくいつもの『エトランゼ』が戻ってきた。 次へ> トップページに戻る